2021年7月4日日曜日

久々に「文楽」を観てきました

毎日雨ばかりで、ニュースも滅入るものばかり。自分自身も先日左手の指の関節が腫れてしまい不安になったのですが、お医者さんにいったところ軟骨が減ることによる「変形性関節症」で特に治療もなく結局は例の「年のせい」ということで、まあ差し当たってお箏を弾くには問題なさそうでほっとしたので、先月(6月24日)久しぶりに国立劇場で「文楽・ぶんらく」を観にいってきたことを書いておこうと思います。



国立劇場はいつ見ても堂々としてしかも形のきれいな建物だなあと思います。
文楽公演は小劇場で開催され、客席は間を空けることなく満席でした。客席がいっぱいでもまん防の基準以内なのでしょう。密な感じはしました。でも以前はロビーでお弁当を広げる人で開演前からにぎわっていましたのに、ロビーでの飲食は禁止されていてお弁当もサンドイッチ程度しか販売していません。お弁当を買うのも楽しみにしていたので残念。館内の無料休憩所でアクリル板の仕切りのあるテーブルでミックスサンドを黙々と食すのでした。これはこれでおいしかったのですが。照明も暗めだし、少々さみしさを感じました。



でも肝心の文楽はとても面白く盛り上がりました。行ってみてよかったです。
演目は3つで、最初に「菅原伝授手習鑑・すがわらでんじゅてならいかがみ)」のいっぱいあるお話のうち梅王丸、松王丸、桜丸の三兄弟とそれぞれの嫁が父の古希のお祝いに集まる日の物語。めでたい祝いの日なのに桜丸が切腹してしまうんです。雑な説明で恐縮ですが、とにかくそんな責任取らなくてもよいのでは、と現代人には理解できない理由で(お仕えした主君が左遷されたのは自分のせいと)桜丸は切腹してしまう。
父と嫁は悲嘆にくれる、悲しいお話ではありますが、三兄弟の妻たちの着物の色がとても好きです。パンフレットの写真のとおり萌黄色(もえぎいろ)というのでしょうか、そしてそれぞれ袖に梅、松、桜の模様も入っています。

次に「生写朝顔話・しょううつしあさがおばなし」でこれがまたすごい話で、好きだった恋人と別れ別れになってしまった深雪(みゆき)が恋人を探す旅に出ましてその流浪の旅の悲しさに泣きすぎて目を患い失明してしまう。お箏と三味線を弾いて暮らしを立てているのですが、ちゃんとお箏を弾く場面があり、お人形なのに本当に弾いているようでした。実際はいつの間にか舞台のそでで弾いている方がいるのでした。なかなか良い曲でした。わたしが天才なら一回聴いただけで覚えて耳コピとか言って家に帰って弾いてみるのですが凡人なのでそうはできません。
その後ストーリーでは恋人のくれた治療の薬を飲んで目は治って見えるようになるのですがその薬を飲むにも現代人には理解できないすさまじい方法で飲むのであった。
思うにこの二つの話とも、すぐに人が死んでしまうこととか、感情の起伏と表現がものすごくて今の感性とはだいぶ違うのですが、当時はそれが一般的な共通認識だったのだと思われ、だとすれば、あと100年もすれば今の時代は100年後の未来人からみれば理解しがたいことがたくさんあるのだろうと思う。
この深雪という女性の感情表現はとにかく激しく、観ていてやや疲れるほどです。まあ少し落ち着いて、と言いたくなったのでした。

そして最後は「万才・まんざい」「鷺娘・さぎむすめ」の踊りでした。人形で踊りとはどうなるのかと思いましたが、本当に動きも滑らかで特に「鷺娘・さぎむすめ」の美しさは秀逸でした。

文楽(ぶんらく)は人形浄瑠璃(にんぎょうじょうるり)と呼ばれ、人形遣い、三味線、そして語りの大夫(たゆう)による舞台芸術です。言葉使いなど分かりにくいところもありますが事前にだいたいのストーリーや登場人物について知っていれば、分かりやすく楽しめるものだと思います。
とにかく人形とは思えない顔の表情や細かい仕草、登場人物のすべてのセリフを語り分ける太夫の熱い言葉とドラマチックな三味線音楽。また観にいきたいと思います。

今回は「文楽若手会」とのことで特に若い技芸員による国立劇場の研修発表会でした。この長期にわたるコロナ禍で芸能に関わる方々のご苦労はたいへんなものと思われますが、また素晴らしい舞台を拝見できることを心から願う次第です。




人気の投稿